加熱式タバコなら大丈夫?~呼吸器学会の見解を踏まえて

投稿者:内科・呼吸器内科医 海村朋子

こんにちは、千葉県銚子市にある医療法人芳仁会「海村医院」本院内科医師の海村朋子です。前回のブログで禁煙治療について話しましたが、禁煙を勧めると「加熱式タバコにしましたので大丈夫です」と言われることがあります。

 

確かに、現在のように加熱式タバコや電子タバコが普及していると「紙タバコと比べて健康被害が少ないから普及している」と考えやすいのかと思います。また、紙タバコから加熱式タバコや電子タバコへ変えるという行動だけでも、その人にとっては禁煙への大きな一歩だと思います。しかし、健康被害・肺障害という点では、紙タバコと比較した加熱式タバコや電子タバコの将来的な安全性については、現時点で十分なデータが得られておらず、「それなら大丈夫です」とは言えません。

 

実際、紙タバコは、タバコ葉を800-900℃で燃焼させるのに対し、加熱式タバコは200-300℃でタバコ葉を加熱してエアロゾル(蒸気)を発生させます。燃焼させないため、タールの発生量は減少しますが、タール以外にも様々な有害成分が発生することがわかっています。

 

日本呼吸器学会は、2017年10月に「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに関する日本呼吸器学会の見解」を発表しました。加熱式タバコは、先述のように燃焼させないだけで、有害成分を完全に除去できるとは言えず、その後、「非燃焼・加熱式タバコ」は加熱式タバコと呼ばれるようになりました。国内外から加熱式タバコや電子タバコによる健康被害の報告も集積されつつあることから、改めて見解と提言を示しています。

 

その見解と提言には、①加熱式タバコや電子タバコが産生するエアロゾルには有害成分が含まれており、健康への影響が不明のまま販売されており、紙タバコよりも健康リスクが低いという証拠はなく、いかなる目的であっても喫煙や使用は推奨されない、②加熱式タバコや電子タバコの使用者の呼気には有害成分が含まれており、他者にも健康被害を起こす可能性が高く、紙タバコと同様な二次曝露対策が必要である、と記載されています。

 

まとめると、加熱式タバコや電子タバコを含むすべてのタバコは、使用を推奨せず、喫煙者の周囲の方に対する受動喫煙についても、紙タバコと同様に対策が必要、ということになります。喫煙に伴う健康被害については、喫煙開始から長期的なデータ蓄積が必要であり、まだ健康リスクについては十分なデータがないだけで、有害成分を考えると、健康リスクがゼロになるとは言えない、ということです。

 

さらに、最近の動物実験では、加熱式タバコのエアロゾルが、気道(空気の通り道)の炎症反応を引き起こすことが確認されており、健康被害の中でも肺障害については、紙タバコと同様に注意が必要と思われます。特に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息などの慢性気道炎症が主体の呼吸器疾患に対しては、加熱式タバコであっても、症状悪化や長期的な病状進行に影響を与えることが考えられ、「禁煙」は絶対に必要、ということになります。