こんにちは、千葉県銚子市にある医療法人芳仁会「海村医院」本院内科医師の海村朋子です。呼吸器疾患を専門的に診ていると、喫煙(タバコ)は「百害あって一利なし」です。肺癌(特に扁平上皮癌や小細胞癌)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎などの呼吸器疾患の多くは、喫煙が発症因子となります。喫煙は、動脈硬化を進め、心疾患や脳血管疾患にも繋がります。遺伝子変異陽性の一部の肺癌や、膠原病関連の間質性肺炎、気管支喘息など、非喫煙者でも発症する呼吸器疾患はありますが、それらの疾患でも発症した場合に喫煙していると、増悪の要因となり得ます。
喫煙者に禁煙を勧めると「本数を1日10本から5本へ減らしました」「加熱式タバコへ変えました」という話を聞くことがあります。確かに、本数を減らす、(一見害が少なそうな)加熱式へ変える、という行動だけでも、禁煙への大きな一歩です。しかし、大事なのは「減煙」ではなく「禁煙」です。また、紙タバコと比較した加熱式タバコの将来的な呼吸器疾患の発症リスクについては、現時点で十分なデータが得られておらず、「加熱式タバコなら大丈夫です」とは言えません。
喫煙は、個人の習慣、嗜好とも捉えられますが、適切な治療により改善が望める「ニコチン依存症」という病気と言えます。「ニコチン依存症」と診断された場合、禁煙補助薬による治療を保険診療で受けることができます。自力で禁煙を試みた場合の成功率は5-10%程度ですが、禁煙補助薬による医療の介入があると、その割合が50%近くに上がると言われています(それでも半数しか禁煙できないことが「依存症」と呼ばれる病気の難しさかと思います)。
現在、日本で保険適応となる禁煙補助薬は飲み薬と貼り薬がありますが、当院では、禁煙治療の第一選択薬とされる、飲み薬のバレニクリン(商品名はチャンピックス)を用いています。チャンピックスは、主に2つの効果があります。1つ目は、脳内の受容体に結合し、ニコチンの代わりにドパミン放出を促すことで、ニコチン離脱による症状を和らげます。2つ目は、万が一喫煙したときにニコチンが受容体に結合しにくくなることで、喫煙しても「美味しくない」「満足感がない」という状態になります。すなわち、禁煙によるニコチン離脱のつらい症状を緩和し、さらに喫煙したときの不快感が増すことで禁煙に繋がります。
チャンピックスの飲み方は、1日1回、1回0.5㎎錠から開始し、様子を見ながら数日おきに増量していき、最終的には1日2回、1回1㎎錠とし、以降同量で続けて計12週間飲み続けます。つまり、最短で12週間(約3カ月)で禁煙が望める治療となります。なお、値段としては、12週間の診察料および薬代で2万円(自己負担が3割の方の場合)ほどかかります。
チャンピックスの副作用として、胃腸症状(吐き気、食欲低下)、精神症状(眠気、悪夢)、頭痛などが報告されています。当院では、2-4週間毎に受診をしてもらい、チャンピックスの量・飲み方を工夫したり、胃腸症状を抑える薬を併用したりしながら、禁煙を望んだ方が可能な限り禁煙を達成できるよう、支援していきます。自力での禁煙が難しい方、「禁煙補助薬」の治療について是非ご相談ください。
