こんにちは、千葉県銚子市にある医療法人芳仁会「海村医院」本院内科医師の海村朋子です。肺気腫、間質性肺炎などの慢性呼吸器疾患の患者さんの中には、内科的な吸入薬や内服薬の治療、呼吸器リハビリテーションを継続的に行っても、病気の進行に伴い、酸素の取り込み能力が低下し、酸素療法が適応となってくる方がいます。
そういった方に、私が在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:HOT)を勧めると、当然ながら最初は抵抗が強いです。「酸素を吸えば呼吸は楽になりますか?」と聞かれます。「登山の時に使うような、苦しい時だけ吸う“酸素缶”はないですか?」これも良く聞かれます。
酸素を吸えば呼吸は楽になりますか、に答えるならば「楽になることもあるが、楽にならないこともある」となります。そもそも、HOTは、継続的に血中酸素飽和度(SpO2)が90%以下のときに適応となります。肺が高度に荒廃していてもSpO2が保たれている場合に、息切れを改善するために酸素療法が適応になるということはありません。そのような場合に酸素を外から吸うと、逆に二酸化炭素がたまって意識障害を起こす(CO2ナルコーシス)ということもあり得ます。HOTの適応はあくまでもSpO2が基準となりますので、息苦しさを軽減するために、HOTの適応が決まるわけではありません。
HOTの目的には、今の低酸素を改善するということ以外にも、低酸素に伴う肺高血圧(低酸素の持続に伴い心臓に負担がかかった状態)などの合併症、ひいては突然死を防ぐということがあります。もちろん酸素吸入の結果として、息切れが改善するのであれば望ましいです。しかし、呼吸筋力の低下が背景にあれば、酸素を吸ってSpO2が改善しても、息切れ自体はあまり改善しないこともあります。
苦しい時だけ吸う“酸素缶”はないですか、に答えるならば、医療保険で使えるそういった治療法はありません。医療保険で使えるHOTは、自宅用の酸素濃縮装置と、携帯用の酸素ボンベの2種類があります。いずれも、酸素濃縮装置や酸素ボンベから細いチューブを通して鼻から酸素を吸い込む方法となります。医師がHOTの適応と判断した場合のみ、医療保険でこのセットを購入することができ、以降も月々の医療費のほか電気代がかかります。
自宅用の酸素濃縮装置は、室内の空気から酸素を濃縮して供給する設置型の装置です。自宅の電源を使って24時間連続して使用できます。キャスター付きで装置ごと移動が可能なものもありますし、酸素チューブは15mほどまで延ばすこともできますので、自宅内でトイレやお風呂など、酸素を吸ったまま移動することができます。
一方、携帯用の酸素ボンベは、外出時に使用するもので、カート型やリュック型、歩行器型など、患者さんの状態にあわせて選択することができます。ボンベの大きさや酸素吸入量にもよりますが、1回外出すると6時間程度持ちます。HOTの導入により日常生活に制限はつきますが、外出や旅行ができないわけではありません。HOTを導入すると生活はどのように変わるのか、次回のブログで話します。
