酸素療法で生活はどう変わる?

投稿者:内科・呼吸器内科医 海村朋子

こんにちは、千葉県銚子市にある医療法人芳仁会「海村医院」本院内科医師の海村朋子です。前回話した在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:HOT)で生活はどう変わるのか、というのが今回の話です。HOTを使うことで、自由に動き回ることができなくなる、というイメージが強いかと思いますが、実際にはいくつかの注意点を押さえれば、HOTにより息切れが軽減し、活動範囲が広がることが期待できます。

 

HOTは、自宅用の酸素濃縮装置と、携帯用の酸素ボンベの2種類があります。いずれも、酸素濃縮装置や酸素ボンベから細いチューブを通して鼻から酸素を吸い込む方法となります。自宅用の酸素濃縮装置は、自宅の電源を利用することで、24時間連続で酸素吸入が可能です。寝室、居間など、患者さんの生活の中心となる場所に酸素濃縮装置を設置することで、そこから、15mほどのチューブを延ばして自宅内を自由に動き、家事や、排泄、入浴を行うことが可能です。酸素濃縮装置については、ここ数年は2kg弱の最軽量の濃縮装置が登場し、ずっと設置したままではなく持ち運びが比較的容易になりました。電源がある場所なら、仕事や旅行、デイサービスなど、外出先へ持ち運ぶこともできます。

 

注意いただきたいのは、酸素を吸っているときは、火気が厳禁です。高濃度の酸素を吸入しているときに、タバコやろうそく、ガスコンロなどの火気を近づけると、チューブに引火し、顔面熱傷に繋がる危険性があります。火気を扱うときは一時的に酸素吸入を中止するほか、日常的に料理をされる方は、ガスコンロをIHクッキングヒーターへ変更することが勧められます。

 

一方、携帯用の酸素ボンベは、外出時に使用するもので、カート型やリュック型、歩行器型などがあります。ボンベの大きさや酸素吸入量にもよりますが、1回外出すると6時間程度持ちます。6時間以上外出する場合は、予備のボンベを車に積んで置いたり、移動先に置いておいたりすると安心です。前述した最軽量の濃縮装置を持ち運べば、電源がある場所を利用しながら6時間以上の外出も可能です。

 

さて、宿泊を伴う旅行や飛行機の利用はどうでしょうか。国内であれば、業者に連絡すれば、あらかじめ旅行先へ酸素濃縮装置やボンベを設置してくれることが可能です。業者は、国内に複数の支店があります。旅先で酸素機器にトラブルがあった場合に対応してもらえるよう、旅先での緊急連絡先を確認しておく必要があります。

 

また、飛行機内に酸素ボンベを持ち込むことも可能です。事前に航空会社へ申請してサイズ・重量などの条件を満たした医療用の酸素ボンベのみ、持ち込むことが可能です。機内は、気圧が地上より低く、酸素分圧が下がることから、通常より多くの酸素が必要となることがあります。医師の指示で普段より多めの酸素流量の設定となることもあります。航空会社に診断書の提出が求められるため、飛行機に乗ることが決まったら早めに準備しましょう。

 

HOTの導入により日常生活に制限はつきますが、外出や旅行ができないわけではありません。今の習慣(仕事・趣味・デイサービス・通院など)を続けながらその一部にHOTが存在するような、生活が望ましいと考えます。