現代人の呼吸が危ない!?

投稿者:内科・呼吸器内科医 海村朋子

こんにちは、千葉県銚子市にある医療法人芳仁会「海村医院」本院内科医師の海村朋子です。前回「咳」の話の中で、「腹式呼吸」のトレーニングについて軽く触れました。さて「腹式呼吸」、そして「胸式呼吸」とはどのような呼吸のことでしょうか。

 

そもそも呼吸は、酸素を取り入れて、二酸化炭素を吐き出す、生命維持に必要な機能です。普段の生活の中で無意識にしているものですが、1分間に12から20回、1日にすると2万から2万5千回もしています。1日にそれだけ行っている呼吸ですから、無意識ではなく意識的に行うことで、全身の症状に影響する可能性はあります。

 

「腹式呼吸」は、胸とお腹の間にある横隔膜を広げる呼吸です。ゆっくり鼻から息を吸って口をすぼめて吐き出すような、リラックスするときの呼吸です。一方、「胸式呼吸」は、口から素早く息を吸って、肋骨の間の筋肉、肋間筋を主に動かす、早い呼吸です。運動直後の肩で息をするときの呼吸です。運動直後は、口で呼吸する「胸式呼吸」になることが多いです。しかし最近は、運動をしていないときでも、鼻ではなく口で呼吸をし、「胸式呼吸」になっている方が多いと言われています。

 

実際に、私が診察中に胸の音を聴くときに、深呼吸を促すことがありますが、口呼吸をしてうまく呼吸を合わせることができない方がいることが気になります。現代人は、スマートフォンの普及に伴う姿勢の悪化や、食事をよく噛まずに食べることによる顎の形成不十分も、口呼吸が増えてきた一因と言われています。

 

鼻から息を吸って横隔膜を動かすゆっくりした「腹式呼吸」を意識的に行うことで、気管支(空気の通り道)が広がり、呼吸が楽になります。咳が続くときに「腹式呼吸」をすることで咳の症状が抑えられるのもその原理となりますが、普段から「腹式呼吸」を意識していないと、難しいかもしれません。

 

私がよく勧めるのは、横になったときにお腹の上で両手を組み、鼻から息を吸い込み、両手を持ち上げるように5秒以上かけてゆっくりお腹を膨らまし、その後、口をすぼめながらゆっくり息を吐き出し、お腹をへこませる「腹式呼吸」のトレーニングです。ゆっくりとした「腹式呼吸」の取得は、リラックス効果だけでなく、内臓の筋肉を鍛えることで姿勢の改善やダイエット効果もあると言われています。普段何気なく行っている呼吸ですが、意識することで、長い目で見たときに大きな効果があるかもしれません。